芥川賞、本谷有希子の変人伝説。繊細なのか、はたまた大胆なのか?吉田豪のトークからその実態を検証。

芥川賞受賞

2016年1月19日に発表された第154回芥川賞を受賞した本谷有希子(もとやゆきこ)さんですが、簡単な経歴は当サイトの以前の記事で確認できます。世間的には知名度が低い本谷さんですが、記者会見で始めてその姿を見た人も多いはず。その可愛らしいルックスからは想像しがたいほどにそのエピソードが面白かったので、今回は吉田豪さんのトークを参考に本谷有希子の姿を浮き彫りにしたいと思います。

吉田豪、本谷有希子を語る

以下に小島慶子さんが担当していたキラキラ(放送終了)というラジオ番組にてプロインタビュアーの吉田豪さんが本谷有希子さんについて語っていた内容を要約抜粋しました。おそらく6年ぐらい前の収録です。

コミックモーニングの忘年会にて

コミックモーニングの忘年会に深夜2時に到着した吉田さん。既に席はいっぱいで唯一あったのが本谷さんの前の席へ案内されると、初対面にもかかわらず「目が笑ってない!」と言われ、以後も何故か怒られる感じだったとか。

そこは百戦錬磨の吉田さん。彼曰く「いい感じで盛り上がって、テープを回しておけばよかったぐらいの戦いを繰り広げた」とか。相手が酔っていたのでしょうか、吉田さんもかなり言い返したようです。

そして話していくうちに何故絡まれたのかが判明します。「やっとマンガ業界ではない人が来たので堂々と絡める」というのがその理由でした。つまり本谷さんは周りが業界関係者ばかりで気をくれしていたので、自分と同じ部外者である吉田さんに親近感を持ち、同時に安心感をもったので同等の立場で話せると思ったようです。

帰ろうとする吉田さんを制した理由

時間も過ぎて吉田さんが帰ろうとした時にまたもや本谷さんから怒られます。

「なんで帰るんですか!」

理由は、吉田さんが帰るという事は「もうここにはネタがない。」と本谷さんが邪推したのでその事に対しての不安や寂しさや焦りがあったので引き止めたのではないかという事でした。

いかに、他人に対してアピールするかに気を配っているかが伺えるエピソードです。つまらないと思われることが嫌なのでしょうかね。なんとなく面倒くさいような人に思えてきました。

説教をされた本谷さん

舞台女優をやっていたせいか、周りからみるとその美貌故か別格のオーラが出ていたとか。そして、その甘いルックスやコラムの作風から、周りの人間からは「甘い感じの作風の穏やかな人」と思われていたらしく「そんなんでは生き残っていけないよ」と説教をされたという事でした。

それに対して本谷さん「その人の言いたいことはよくわかった」といいます。なぜなら、以前に本谷さんも、女である事を売りにしていた女性に対して全く同じ様な事を言ったという前科があったからでした。

なので内心では言い返したかったようですが、その前科故に言い返せなかったのですが、

「あとで相手が一番落ち込むプログラムにいれたんですよ。」

という謎の言葉を発します。吉田さんがその意味を尋ねると、

「私が演劇の演出家で等と説明するよりも、後々になって私の別の仕事についての話が耳に入ってきた時に、『うわっ!あの時恥ずかしい事を言ってしまった!』というように思わせたい、そしてその為に世界的な仕事をしようと思ってる」という主旨の事を言ったとか。

さすが小説家、転んでもただでは起きません。ものすごい後付けの理屈のような気もしますが、瞬時にそのようなストーリーが頭の中で組み立てられて言語化するあたりはプロですね。悪く言えば単なる考えすぎとも言えますが。

自己完結的な本谷さん

編集長と肉体関係があるのでは?と疑われるようなあからさまな依怙贔屓を受けているように見える女性漫画家がいたらしいのですが、本谷さんはそのような関係を見ると、女性のほうにではなく、編集長のほうへ失望感を感じたそうです。

そしてその失望感を知り合いの編集者に語ります。「あの編集長、空っぽだな。」

しかし本谷さん、「なんて事を言ってしまったのだろう。少しだけ話した人の事を空っぽだなんて」と後になって凹み、その事をたまにお風呂の中でも思いだしたりして三ヶ月ぐらい引きずっていたとか。

その事実を直接編集長に言ったわけでもないのにこの凹みよう。かなり引きずるタイプですね。そして最後にはその事を言った知り合いの編集者に電話をします。

「あの編集長の事を空っぽと言って私は傷ついている。」

自らまいたタネのに衝動的に責任転嫁をする言語に変換されてしまったのでしょうか?突然相手のせいにしてしまいます。これでは言われた方もわけがわからないですね。見事な自己収束っぷり。勝手に言って勝手に傷ついてしまっています。これでは誰も何も言えません。スタジオの中もこれには大爆笑。しかし本人としては深刻な悩みだったのでしょうが、そう考えるとますますおかしくなってしまうので、人間の心理とは実に摩訶不思議なものです。

「そう思った事は本当だし、言った事は取り消さないといけないけど、今も苦しいんです。この噂が出版界でも噂になってこの連載(モーニングのエッセイ)も終わるかと思うとずっと怖くてマネージャーにも相談した」

とその繊細さには驚かされます。そして吉田さんは雑談つもりで話したこの話を面白いので全部使おうと言ったのですが本谷さんは反対しなかったとか。吉田さん曰く「自意識過剰」との事ですが、同時に自己をアピールする事も忘れておらず、そのへんはさすがにプロ意識が高い人だなと思いました。そして話のテーマは自意識についてという事になったようです。

しかし一連の言葉の組み立て方を見ると明らかに通常の思考パターンから外れるというか、無意識に迂回している気配がします。その特殊な理屈を言語化できる事が才能という事になるのでしょう。

回転しすぎる本谷さん

「同性に好かれようとする気がない」

若さやルックスを利用してのし上がってきたと、言わなくていい事を普通に言えるほど正直な人。なんでそんなに正直に言うのですか?と聞いた所

「自慢したかったんですよ。凄いね、って言われたくて」

実にストレートな物言いですが、確かにこれでは同性からは好かれませんね。しかし一見底が深そうな話に聞こえますが、実は皆がやっていて皆が思っていることなので、それほど深い話ではない、いや、むしろ当たり前過ぎるくらい当たり前で浅い話なのですが、本谷さんは先の先まで読んでいて、何回転しているのかわからなくなるという、周りの読みを見越したうえでの発言ではないかと、吉田さんや小島さんはおっしゃっていました。たしかにそう思わないでもないですが、本人は意外とそこまで考えていないような気もしますが、結果的に周りにそう思わせるような雰囲気を醸しだすという意味において、自分を演出する才能は秀でたものがあるのではないでしょうかね。

しかし、

「劇団に本谷有希子という名前をつけた時点で同性からの支持はあきらめている。こうして同性の支持をもらう気がない姿勢って同性は認めてくれないですかね?あの人同性の支持いらないって言ってる、格好いいなぁ、みたいな。」

とやはり同性からの支持を内心では気にしているようです。ここまでくると戦略家なのか単なる小心者なのかわからなくなってしまいます。物事を素直に言えない性格なのでしょうか。

話を聞くだけならば実に面白いですね。話を聞くだけならば。

そして吉田さんは本谷さんに「同期の人で本谷さんをメチャメチャ嫌っている人がいるんですが…」と話を振った所(振る方も振る方ですが)、よほど気になったのか「同期?有名人ですか?」と食いついてきたそうですが、吉田「違います」と言った所、「じゃあいいや。」とあっさりと引いたとか。ライバル意識が相当高そうな感じですね。

その他のエピソード

その他にも様々なエピソードがあるのですが、全部書くと膨大な量になってしまうので以下箇条書きとしてまとめました。

「自分は切れる刀だったのに、気づくと丸い刀になっていた」

演劇の登場人物だと斬りまくっても誰も傷つかず、それでストレスを発散しているのだけど、現実は自分の言動一つで誰が傷つくかわからないから大変だ。

本谷名有希子言集
・遠距離恋愛していた彼氏が電気グルーヴのファン。
・情緒不安定の私と健全な私、どっちが格好いいのかな。
・最近よく悩んでいたんですよ、カリスマ感と等身大とはどっちがいいかという、風呂で。
・(吉田豪がそんなにカリスマ感がほしいのですかという問いに対して)欲しい、欲しい、カリスマ感欲しい!
・100万円ならカリスマ感を買います。
・自己演出が過剰でブラックジョークが激しく周りがドン引き。
・吉田「大きな悩みがあるのですか?」本谷「ない。」
・サブカルの知識は浅い。
・自分がいかに常識人でダメなのかということろは自覚していると吉田さんが言った所「私だって欠落しているところはいっぱいありますからね!」とよくわからない所で対抗心を燃やす。
・演出の仕方が怖い。方をトントンと叩いて、『それは演技なんですか?』と指導。

以上の詳しい内容は劇団本谷有希子 公演パンフ「甘え」に掲載されているようです。だいぶ前のものですが、現時点でもオークションでちらほら確認できますので運が良ければ入手できると思います。

kofsa

インタビュー記事

 

以下はパンフはついてないようなので注意してください。

 

総合すると、頭の回転がよすぎて自己を演出しきれないところで悩んでいる常識人といった感じでしょうか。

芥川賞のインタビューを見る限りでは特に変わった様子も見られなかったのですが、実は選考員界は密かにそのある種の奇行ぶりを期待して話題作りの為に彼女に賞を与えたが不発に終わったという失礼な邪推をしたくなってしまうほどに、今回掲載したインタビューからは察せられるのですが、やはり6年という、私の中での勝手にこしらえたブランクは彼女を常識人に戻してしまったのか?というと、本人からは「違います!」と声が飛んできそうではありますが、いかがなのでしょうか。

 

以上、本谷有希子のインタビューで見る人物像についてでした。

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