芥川賞・高橋弘希「送り火」直木賞・島本理生「ファーストラブ」を簡単に振り返る

2018年7月18日、第159回芥川賞・直木賞の受賞が決まりました。

受賞作は以下の通り。

 

芥川賞・高橋弘希「送り火」

直木賞・島本理生『ファーストラブ』

 

今回受賞を果たした高橋氏、島本氏は共に文壇で活躍する実力派の作家です。

高橋氏は芥川賞に過去3回ノミネート、島本氏は芥川賞に過去4回、直木賞に過去2回ノミネートされており、今回が両名にとっては満を持しての受賞となりました。

島本氏は、今回で6回目のノミネートとなりましたが、ご本人もファンも「ほっとした」という気持ちが正直なところでしょう。

受賞会見では、高橋氏の飄々とした雰囲気と島本氏の「ホッ」としたという感慨の深さがよく表れたものとなりました。

「芥川賞作家」と「直木賞作家」の態度は、毎回対照的というかなんというか、比べてみるのも面白いかもしれないですね(笑)

 

今回は、その両名について簡単にまとめていきたいと思います。

 

高橋弘希のプロフィール

高橋弘希は1979年生まれ青森県出身立教大学文学部の卒業です。

作家としての経歴は2014年度第46回新潮新人賞受賞から始まりました。

新潮新人賞の受賞作である「指の骨」

「戦争体験のない現代の若者が戦場における人間の葛藤や疑念を巧みに書いている」

と評価され、第152回の芥川賞の候補にも選ばれています。

当時の選評では、必ずしも高い評価を得たとは言えませんが、その文章の技巧については高い評価を受けていました。

受賞当時から好評を得ている作家さんなのです。

 

今回の受賞作である「送り火」に関して文芸評論家の佐々木敦さんは

「少年たちが暇つぶしに行う異様な遊戯」

という域を超えて

「世界そのものの否定性が宿っている」

と大絶賛しています。

 

しかし、そのような評価のなか芥川賞受賞会見の中で高橋弘希さんは受賞を「うれしいっちゃ、うれしいです」と、嬉しいのかそうでもないのか、飄々とした態度で答えていらっしゃいました。文士らしいですね(笑)

彼の態度を演出ととるかどうかは賛否の分かれるところではあると思うのですが、以前から主催者側は世間の耳目を惹くのにやっきになっているとも言われているので、これはこれで想定の範囲内ではあるのでしょう。

あまり度が過ぎて賞の権威に傷がついてもいけないのですが、この程度であれば、下手をしたら事前に打ち合わせをしていた可能性も大いにありうるでしょう…というのはいささか考え過ぎかもしれませんが。(笑)

 

高橋弘希のエピソード

高橋弘希さんの受賞時の職業は予備校の講師です。本人の相貌から考えても、予備校の講師、というのは納得です(笑) 茶髪にウェーブのかかった髪が目のあたりまで伸びているその髪型は、教師には不向きなルックスですが、予備校であれば納得ですね。

更に、高橋さんはバンドマンとしても活動していたんですね。作詞・作曲・キーボードを担当していたとか。

ネット上では、芥川賞の時点でもバンドマンを続けていた、という情報が多く載っていますが、それらは事実と異なります。

『日曜日の人々』という作品で2017年に野間文芸新人賞を取った頃のインタビューでは「音楽と小説は両立することができない」から音楽とは離れている、と仰っていました。なので、今は作家一本で活動されている、ということです。

予備校の講師に関しては、情報がないのでなんとも言えません。

が、文学の賞を新人賞も含めて3つも獲得している作家さんなので、作家業だけで生活している、と考えたいですね。純文学は売れない、と常々言われていますが、芥川賞作家が作家業に専念できないのは、少し残念な気もしますから。

 

島本理生のプロフィール

島本理生さんは、1983年生まれ・東京都生まれの作家です。

作家としての経歴は極めて速く、2001年18歳の年に「シルエット」で群像新人文学賞の優秀作に選ばれてデビューします。

その翌年、19歳の年に執筆した「リトル・バイ・リトル」で芥川賞の候補選ばれます。

その後20歳の年には「生まれる森」で再び芥川賞にノミネートされます。

なお、この年の芥川賞は金原ひとみさんと綿谷りささんの2人が受賞しましたが(女性二人、しかも若手ときて当時はいろいろと言われていましたが)、島本さんも含めて19、20歳という若い女性の作家が3人も候補として挙げられていたのです。17年もの間、第一線を走り続けている大変優れた作家さんですね。

受賞会見では、2011年には『アンダスタンド・メイビー』が直木賞の候補となっていましたが、選考から漏れてしまい、その時から受賞に漏れたことを「3年間は夢に見た」と仰っています。キャリアが長い分、候補に上がってからのプレッシャーも重いものとなっていたのかもしれませんね。

島本理生のエピソード

上にも書きましたが、島本さんは18歳で小説家デビューを果たしました。芥川賞受賞までの17年の間に『ファーストラブ』を含めて22作もの小説作品を単行本として上梓しています。

そして、2015年までに出版されているすべての作品が文庫化されています。単行本がよく売れる作家でなければ、文庫化はされません。著作の半数以上が文庫化される、というのは大人気作家であることの証です。

受賞のインタビューでは柔らかな表情が印象的だった島本さん。

前東京都知事でもあり、芥川賞の選考委員でもあった石原慎太郎さんに言わせれば、島本さんの小説は「単調」であるらしいのですが、言い換えればそれは「王道」であるということです。

王道の持つ面白さを十分に引き出して人気を博しているのが、島本さんの小説なのかもしれません。

なにはともあれ、6回目のノミネートで受賞できて一安心です。『ファーストラヴ』、ミステリー仕立ての恋愛小説です。「送り火」と共に是非とも書店でお買い求めください!

 

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