最近、空前のパンブームと言えるほど、パンの人気が高まっています。日々、どこかでパン屋さんが開業していますし、行列が当たり前のパン屋さんも多く、またパンのフェスティバルには多くの人が遠方から訪れています。
更に高級食パンに見られるように、パンとしてはかなり高価なものも出回っていて、それがよく売れているのです。パンと言えば、昔は子供のおやつ程度に考えらえていたものですが、今では食卓のメインとしてしっかりとその存在感を示すまでになりました。
というわけで今回は、北海道でそのパン作りに全身全霊を傾けている奥土盛久さんをチェックしてみたいと思います。彼の経歴や、どんなパンを作っているのかなどを簡単にまとめてみました。
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子供の頃にテレビで見た牛飼いに憧れ、北海道江別市の私立大学「酪農学園大学」へと進学。
私立大学としては全国一の広大な敷地を持つこの大学で、奥土さんは農業の基礎を学びました。
大学卒業後、奥土さんはドイツに農業研修としてわたります。そして、そこで出会ったライ麦パンが奥土の人生を変えるのです。ドイツで研修を終えた後は、3年ほどかけ東欧を回り、そして帰国。
26歳の時に牛飼いになるという夢を叶えるべく、北海道占冠村へ入植します。ただ、そこでは土地の開発が進み、農業を続けることが困難になっていくのです。そこで奥土は1990年に家族6人で現在のニセコへ再入植し、新たに農業を始めます。
ただ、農業だけでは収入が乏しいので、ハムやベーコンなどの酪農製品を販売するようになり、そして2002年にパンの製造を開始したのです。
奥土のパン作りの源流は、ドイツの研修時代に食べたライ麦パンです。
この味が忘れられず、帰国後に何年も試行錯誤した上でようやく納得できるパンが出来上がりました。更に奥土はこのパンに自分なりのアレンジを加え、自分でも買って食べたいと思えるパンにしたのです。
奥土のパンの特徴は、自家農園で育てたライ麦や小麦を使い、自分でレンガを一つ一つ積み上げていった石窯で焼くハード系のパンということになります。酵母はぶどうやライ麦から取った自然酵母で、やや酸味を感じます。
保存料は入っていませんが、12時間かけてじっくりと発酵させた生地を高温で焼くことにより日持ちがよくなります。
また半年かけて作った石窯で薪をくべて焼くため、外側はしっかりとこんがりしますが、中はもっちりとした食感となり、これが奥土のパンの最大の魅力となっています。パンに練りこむ野菜も低農薬ですので安心・安全なパンに仕上がるのです。
やはり奥土農場まで行き、そこで焼きたてを買うのが理想ですが、北海道の山の中まで行くのは地元の人以外はほぼ不可能でしょう。たまに札幌のデパートで催事を行っているようですが、これも北海道以外の人はなかなか行くことはできません。
どうしても欲しいという人は、奥土農場のホームページにアクセスして、そこから購入することができます。ただ、カートなどはありませんので直接問い合わせることになります。また家族での運営のため数量に限りがありますので、手元に届くまでにはかなりの日数がかかることも覚悟しましょう。
牛飼いになりたいという夢を追い、北海道の大自然の中へ飛び込んでいった奥土。土地を開墾し作物を育て、自然の恵みが溢れる極上のパンを作り上げました。自分が納得できるものを作ることは、すなわちそれが誇りとなるわけです。
駅前の一等地でなくても、誇りが持てるパンを作ることで、全国から多くの人が奥土のパンを求めてくるのです。こういった生き様や信念はパン作り職人でなくとも、すべての職業の人に当てはまるものでしょう。パン一つからでも多くのことが学べるのです。